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Magical Zipangu 四話「意気無き者・上」

執筆者の写真: RyoutanRyoutan

カーン!カーン!



 物見櫓からの鐘の音により、昼に目が覚めた。この音は、緊急事態の時に鳴らされる音であり、鐘が鳴らされると麻聖兵は城内に召集させられる。麻聖兵の訓練生も後詰めとして召集される。訓練の際に使っている簡易的な鎧を身に付けて、長屋から飛び出した。



織田領・美濃国 岐阜城 城内


 麻聖兵の正規兵と訓練生を合わせて、およそ二百人ほどであり、他大名家に比較してみると多い方である。そして、麻聖兵部隊長から


「これより、各部隊速やかに迎撃せよ!」


 迎撃の命令が下されて、麻聖兵の正規兵および、経験のある訓練兵は馬よりも、そして弓矢よりも速く飛んで行った。その一瞬の出来事に俺たち未熟な訓練生は驚愕した。


 どうやら、信濃国から武田家が西進しており、すでに岩村城は陥落しているようだ。現在の織田家は尾張国と美濃国の二カ国を治めており、伊勢に侵攻をしていた。そのため美濃国の守りが弱くなっていたところに、武田信玄は目をつけていたようだ。今回、新参者が多い、この部隊を率いている菊が一言


「もう少しで着く。気合い入れていくぞ」


 菊は、普段から人付き合いが悪いが、冷静な判断力と客観的視点を持っていた。そのため、部隊頭として新参者が多いこの部隊を率いることとなった。


「どうせ、すぐに終わるから気楽に行こうや」


 後ろから光村の怠そうな声がしてきた。あまり気力が無いらしい。と言うのも、今回後詰めとして配置はされてはいるが、細かい作戦命令は無く、正規兵としての先輩たちの立ち回り方を参考にするために配置された、と言っても過言では無い。


「そんな心意気だと死んでしまうかもしれないよ」


 と暗い声で光村に向かって言った。菊は続けて


「配置場所に着いたよ」


 部隊全員は平野に降りた・・・その時、左方面から衝撃波に襲われたが、気がついた時には遅かった。回避する術は持っていなかった。

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