黒煙が立ち込める空、焼け野原と化した集落、そして四方八方から人々の悲鳴。そんな中、かすかな光が空から差した。その時、俺は見てしまった。空高くに見知っている人間が浮いてるのを!
「う…嘘だろ?!あれは………」 「に……さ……ま!」 「兄様!」
目の前には、小柄で黒長髪が特徴的である華の姿が見えた。そして、華は間髪いれずに口を開く。華は怒りながら、
「今日は傭兵適性度検査の日ですぞ!」
と言い終わる頃には、俺の体を揺らしていた。
「分かった。分かったから揺らすのはやめて くれ〜…」 「よろしい!では、行ってらっしゃい!」
と調子に乗りながら、華は俺の体から降りた。ようやく華の呪縛から解放され、俺はゆっくりと起き上がった。すると、囲炉裏の方から声が聞こえてきた。
「華〜兄様を起こした?朝食は出来てますよー」 「起こしたよ凪!ご飯だ!」
体を起こした俺は囲炉裏の方へと足を進める。そこには、顔立ちが華にそっくりな双子の妹である凪だ。見分けのは簡単で、凪は短髪であり、性格が華の正反対で大人しめである。
「え〜今日のご飯もおむすびなの?」
「文句を言わないの華。豊かな生活をしているわけではないから仕方ないでしょ」
どうやら先に囲炉裏でご飯のお話をされているらしい。まぁ、貧乏な農民と言う身分だから仕方なく、ご飯を食べられだけ有難いなと思いながら座り、おむすびを食べ始めた。母親1人で育てられたも同然だった。1人目の父親は''故郷に帰る''で、そのまま安否不明。2人目の父親は戦で死んでしまった。そういえば、俺の名前の由来って1人目の父親から4文字を貰って、''涼太''とかだったけ?そんな事を考えているうちに、おむすびを食べ終え華と凪に告げた。
「母ちゃんを助けて行くんだぞ」
「うん!」
流石、双子と言ったところ思うほど息のあった返事だった。そして、俺は傭兵適性度検査が行われる屋敷に向かうために囲炉裏を後にした。
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