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Magical Zipangu 二話「期待と理不尽」

  • 執筆者の写真: Ryoutan
    Ryoutan
  • 2019年4月11日
  • 読了時間: 3分

これぞ日本晴れ!と自慢されるかのような天気の中、俺は振り返らずに家屋を出た。家屋の前にある田んぼの方から母ちゃんの声が聞こえた。


「凉太!気をつけて行くんよ!」


分かってます。分かってますよ。と思いながら母ちゃんの方に視線を向けて


「早く帰ってくるから大丈夫だから!」


と言った。しかし、お喋り好きな母ちゃんの口は閉まらない。


「凉太の白い髪、青い瞳、そして顔立ちが可愛いーー」

「俺男だから!!」


  俺は、母ちゃんを無視して、屋敷の方へと歩き始める。俺は、自分の容姿が嫌いだ。俺は男なのに、可愛いとか矛盾しているからだ。そもそも、この容姿は父親譲りであり、父親も美人だったと聞いたことがある。父親のせいで、この容姿になってしまったと考えると父親が大嫌いだ。


「くそ…」


  俺は足元にある小石を蹴っていた。

 屋敷に着くと男女合わせて40~50人程度が中庭に集まっていた。きっと、俺と同い年の16歳なんだろ。俺は縁側に腰をかけた。一人ずつ奥にある部屋に呼ばれている。きっと、あの部屋に魔聖兵器があるのだろう。そんな事を感がていた時、後ろから肩を叩かれた。


「久しぶり凉太。元気にしてた?」

「悪くもなければ、良くもないかな」


 振り返らずとも分かる。この声の持ち主は''めあ''だ。めあは、俺と同い年で幼少期の頃からの仲である。めあは俺の隣に腰をかけて言った。


「私たちは、これからどうなるのかな?」

「俺に訊いても分からない…ただ、今まで通りな生活は出来なくなるかもな…」

「そう、よね…」


いつもだと元気が溢れているめあの目は、潤んでいるように見え、橙色の長髪が風になびいた。何を話せば分からないまま時から過ぎていった。

  中年中肉の男から声をかけられて、奥の部屋へ通された。部屋に入って目の前に顔立ちが整って好青年らしい男が1人、好青年の目の前に魔聖兵器があり、魔聖兵器の両側にお付きの人が2人いた。魔聖兵器の実物を見たのは、これが初めてだ。魔聖兵器にも多様な種類があるらしいが、俺の目の前にあるものは長やりを基礎として作られている型だった。好青年の男は告げた。


「今から傭兵適性度検査を始める!魔聖兵器を持て!」


  俺は言われるがままに、魔聖兵器を手に取った。その時、魔聖兵器から何かが、流れ込んでくるのが分かった。そして、長やりが銀色に激しく輝き始めて、それを見るなり好青年は、

「これほどの輝きーー美しいーー」

「あの、持ちましたけど、どうすれば…」

「不採用にする理由はない。合格だ。」


  その後、別の部屋で契状に血判をさせられて、今後の説明を聞いて、別の場所に移り住むことが決まった。俺に拒否権はないらしい。部屋には20人程いて、その中にめあの姿もあった。



織田領・美濃国  岐阜城  城下町


「へぇ、ここに住むのか」


  俺は、新しく住む長屋の居間に座っている。決して、広くはないが1人で生活をするには充分な広さだ。そして、目の前にめあの姿もあった。


「悪くはない作りよね」

「めあは別の長屋だろ。わざわざ来なくても…」


と、めあは笑いながら立ち上がり、腰に手を当てて言った。めあの目は、とても輝いており、ずっと先を見ているようだった。


「遊びに来たっていいでしょ?」

「そんなに、これからが楽しみなのか?」


めあは新しい物が好きであり、その時だけ、人が変わったかのような口調になってしまう。そして、続け様に


「うん!凉太も既に知っている通り私、目新しい物とか好きだから!」


  俺も立ち上がり、魔聖兵器について、思っていることを正直に話そうと口を開いた時、''トントン''と戸を叩いた音がした。何事かと戸を開けると、一度だけ見たことある姿だった。その姿は、


「少し邪魔するぞ」


  傭兵適性度検査の時にいた好青年な男だった。

 
 
 

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